大和ハウス工業株式会社

DaiwaHouse

永瀬常務インタビュー

私たちは、「21世紀は風・太陽・水」の事業が必要と考え、2007年に風力発電事業に参入するなど、かなり早い段階から「環境」をビジネスとして取り組んできました。当初、それらが成功するという確証はなかったものの、“失敗をしても前に倒れる”、“登れない山はない、渡れない河はない”という積極精神が根付く企業文化の中で挑戦を続け、社会の再生可能エネルギー(以下、再エネ)の普及とともに、業容を拡大させてきました。
気候変動対応が喫緊の課題となっている今、“2030年までにやれることはすべてやる”という信念で、マテリアリティの一つである「カーボンニュートラル&サーキュラーエコノミー」の達成に向け、7次中計では「すべての建物の脱炭素化によるカーボンニュートラルの実現」を重点テーマの1つとしました。この「カーボンニュートラル戦略」の推進を通じて、環境配慮建物による一棟単価の向上や再エネ発電所の請負拡大により「フロー事業」を成長させつつ、再エネ発電・電力小売といった「ストック事業」との相乗効果を図り、『収益モデルの進化』につなげていきます。そして、こうした事業上の価値向上を追求すると同時に、脱炭素という社会的価値の向上にも大きく貢献し、これらの好循環を実現していくことが私の使命だと考えています。その使命を果たすべく、「温室効果ガス(以下、GHG)排出量を減らす」、「再生可能エネルギーを増やす(普及する)」という2つのKPIを設定し、取り組みを進めています。

GHG排出量を減らす

SBT1.5℃水準の削減目標を設定

当社グループでは2030年までにバリューチェーン全体のGHG排出量を2015年度比40%削減することをマテリアリティのKPI の1つに設定しています。スコープ別には、SBTの1.5℃水準の認定を受けた野心的な目標として、事業活動(スコープ1・2)では70%、まちづくり(スコープ3 カテゴリ11)では63%の排出量削減を掲げています。その実現に向け、自社発電由来の再エネによるRE100の達成や新築建物の原則100%ZEH・ZEB化、原則全棟屋根上太陽光発電パネルの設置等を推進していきます。

ZEH・ZEB、屋根上太陽光の原則100%達成に向けて

7次中計の初年度を終えて、個人・法人を問わず、お客さまの環境に対する意識変化を感じています。2022年度のZEH率は、前年度の53%から86%へと大きく伸長しました。ZEH標準対応商品の販売促進や分譲住宅のZEH率向上も寄与していますが、お客さまの環境への意識の高まりや、電気料金の高騰も相まって、都心部の狭小地や豪雪地帯などを除けば、太陽光発電パネルを設置することが当たり前になりつつあります。しかし、まだ向上の余地はあると考えていますし、社会からの要請も待ったなしで進んでいます。私たちも、スピード感を重視しながら普及を進めていきます。
法人のお客さまについては、これまでも環境への対応として、再エネ電力を導入する企業が増加傾向にありました。しかし昨今の電気料金の高騰を受け、再エネ電力の価値が見直されるようになり、お客さま自身の投資による太陽光発電パネルの設置が増えています。7次中計の検討段階では、お客さま自身の投資は全体の1割程度と想定し、残りは当社グループが屋根をお借りして太陽光発電パネルを設置することで全棟の屋根上に設置するという考えでいました。しかし足元では予想とはまったく異なり、お客さまによる自己投資の割合が約8割にまで高まっています。
ただし、建築物の用途や大きさにより、お客さまの考えにも若干の差があります。例えば、大規模物流施設などは、大容量の太陽光発電パネルを搭載でき、かつ使用電力量も比較的少ないため、享受できるメリットが大きく、再エネの導入に対して前向きです。しかし、小規模店舗などは、店舗単位では大きなメリットにつながりにくく、導入に対して消極的になりやすい傾向があるため、全国展開しているドラッグストアなどに包括的な再エネ活用の提案を進めています。
またバリューチェーン全体のGHG排出量削減に向けては、原材料となる鉄骨やコンクリート等の製造段階での排出量削減も重要です。サプライヤーとも協働して取り組みを進めるとともに、製造時の排出量が少ない木造建物の比率拡大も推進していきます。

再生可能エネルギーを増やす(普及する)

オフサイト発電所の圧倒的地位確立に向けて

マテリアリティの2つめのKPIとして、2030年度までに累計5,000MW以上の再エネ供給を掲げており、2022年度末現在、再エネ発電設備の施工実績は累計2,706MW、また当社グループでの開発・運営実績は602MWとなり、順調に進捗しています。固定価格買取制度(FIT)の終了を見据え、メガソーラーの建設は減少傾向にあり、今後は、オンサイトPPAおよびオフサイトPPAに注力していきます。
オンサイトPPAは主に屋根上太陽光発電パネルの設置など、引き続き各事業部と連携しながら進めていきます。
一方オフサイトPPAは、需要家の敷地から離れたところに発電所を設置するため、適地の探索から系統接続の手続きなど、着工までに1年近い準備期間を要しますが、足元で実を結び始めています。オフサイトPPAに取り組む企業は多くなく、取り組んでいるとしても小規模の発電所がほとんどです。一方、当社グループは、長く蓄積してきた全国規模の土地情報を基に、大規模開発が可能な適地を探索できるため、今後、「オフサイト発電所といえば大和ハウス」と言われるほどの圧倒的な開発力を強みにしていきたいと考えています。また、オフサイトPPAには、電力の需要家(買い手)が必要になるため、お客さまとのリレーション構築を専門とする新たな部署を設置しました。その結果、1年前には1社だった需要家が、現在は数十社に増加しています。
オンサイトPPAのメリットは、系統への接続が不要となるため、託送料金などのコストを抑えることができる点です。しかしながら、施設の使用電力が大きく、屋根上の太陽光発電だけで賄うことができない場合、不足分は市場から電力を購入する必要があり、そうすると100%再エネにはなりません。そこで、オフサイトPPAを活用し再エネ電力を供給することで、100%再エネ化を実現していただくことが可能になります。環境エネルギー事業では、オンサイトPPA、オフサイトPPAをお客さまのニーズに合わせてご提案し、普及を図っています。

バイオマス専焼発電所への挑戦

2023年1月、株式会社響灘火力発電所を当社のグループ会社としました。同社が運営する発電所では、石炭70%とバイオマス30%の混焼による発電を行っていますが、石炭混焼発電を停止し、バイオマス燃料を100%利用したバイオマス専焼発電所へ転換、2026年4月の運転開始を目指しています。
脱炭素化の流れが世界的に加速し、ゼロカーボンに向けた取り組みが求められるなかで、バイオマス専焼化への転換ができれば、再エネをさらに普及させるチャンスにもなると捉えています。この転換により、年間のCO₂排出量を約45万t削減することができ、2050年までの25年間で約1,000万t以上のCO₂削減に貢献できる計算です。長期的な計画にはなりますが、社会的にも意義がある取り組みだと考えており、環境先進企業としての責務と強い意思を持って取り組んでいきます。

住宅・建設業界初のRE100の達成に向けて

当社グループでは、2022年度末現在、612.3MWの再エネ発電所を運営(自家消費含む)しており、これは総電力使用量の1.57倍に相当します。これは、当社グループの事業の拡大が継続し、使用電力が増えていったとしても賄えるレベルだと考えており、こう した自社発電所由来の再エネを活用し、自社で使用する電力の再エネ化を進めています。自家消費に加え、電力の再エネメニューへの切り替えおよび需要家による非化石証書の購入も進めており、大和ハウス工業(個別、国内)では、2022年度に購入電力の再エネ100%を達成しました。2023年度はその範囲を海外含むグループ全体に広げ、2025年度には自社発電所を含めたグループ全体でのRE100達成を目指しています。  

今後の環境戦略でも大和ハウスらしさを発揮する

当社の強みを有機的に活用する

私たちはいち早く環境を事業機会として捉え、さまざまな取り組みを進めてきました。それが現在、優位に働いていると感じています。当社グループの年間再エネ発電量は829GWhと、発電専業ではない事業会社としては非常に規模が大きく、同業他社にはない環境エネルギー事業を持っていることも特長の1つです。また、日本は国土面積に対する再エネ発電比率が高く、自然保護や景観に配慮しながら発電設備の設置が可能な立地は限られています。そのため、今後の再エネ供給に向けては、いかに設置可能な土地を確保できるかと、屋根上の活用が鍵になると考えており、それらは、全国規模の土地情報力を持ち、多くの建築物を供給する当社グループの強みが最大限活かせることだと考えています。お客さまからも 、建物用地のご提案、設計・施工はもちろんのこと、環境対応まで一貫して対応できることをご評価いただいています。

取締役常務執行役員 環境エネルギー事業本部長 永瀬俊哉

2030年のその先を考えた時、再エネ、特に太陽光発電のコストは今よりも下がると考えています。10数年前、FIT制度の開始当初に建設した発電所は、減価償却が終了すれば、1kWhあたりの単価は約40円から1/10以下に下がるでしょう。それでもソーラーパネルの劣化は年に0.5%程度ですので、設置から30年以上経過しても十分に発電能力があります。風力発電は20年経過すると建て替えが必要になることを考えると、今後は太陽光発電の電力が安価で市場に出回ると予測しています。加えて将来的に蓄電池のコストが安くなれば、太陽光発電と蓄電池を組み合わせることで、安定的な電源になります。その段階まで成長させることができれば、再エネは日本の安全保障に貢献できるでしょう。10年後、あるいは20年後、再エネ事業のポジションが高まるにつれて、カーボンニュートラルの実現が近づくと考えています。
そこで、まずは2030年までに、“やれることはすべてやる”ことに集中します。そのうえで、その先の2050年カーボンニュートラル実現に向け、持続可能なまちづくりを推進していきます。おそらく国内トップクラスではないかと思いますが、さまざまな用途の建物を、世に多く生み出す企業の責務として、自社だけではなく、世界や日本政府が掲げるカーボンニュートラル目標に寄与したいと思っています。私たちが世の中に貢献できることはまだまだあると考えており、今後もワクワクするような挑戦を続けてまいります。  

大和ハウス工業トップ

個人のお客さま

住まいを探す

大和ハウスグループの住まいを探す

(土地情報 / 新築・中古一戸建て / 新築・中古マンション)

法人のお客さま