大和ハウス工業株式会社

DaiwaHouse

CFOメッセージ

CFOメッセージ

着実な事業成長に向けて優良な資産を積み上げる

第7次中期経営計画(以下、7次中計)の経営方針である「経営効率の向上」および「収益モデルの進化」に向けて取り組みを進めております。規模拡大や安定的な利益成長が期待できる分野に積極的に投資し、優良な資産を積み上げることで着実な成長を目指します。その結果として、得られるリターンを株主に還元するとともに、次のさらなる成長に向けて再投資をしていきます。成長に向けた投資先としては、物流施設や商業施設を中心に新規領域への投資先としてデータセンター、公設卸売市場などを含めた不動産開発投資です。2022年度においては、不動産開発投資4,080億円の結果、投資不動産残高は1兆6,108億円となり、将来のキャピタルゲインにつながる優良な資産は順調に積み上がっています。それに加え、海外成長に向けた住宅分野への投資や、カーボンニュートラル実現に向けた投資も戦略投資として積極的に推進していきます。
そのほかDXのためのIT基盤投資、デジタルコンストラクション投資などの設備投資についても進めており、ロボット技術やドローンを活用した作業の省人化・自動化などにも取り組んでいます。将来の事業を支える人的資本・知的資本への投資も進めています。

D/Eレシオは0.6倍を上回るも投資ハードルレートを引き上げ、金利上昇に備える

経営効率の向上に向けては、財務健全性の維持も重要視しています。当社は、D/Eレシオ0.6倍程度という財務規律を設けておりますが、2023年3月末においては、有利子負債は1兆8,494億円となり、D/Eレシオは0.72倍(ハイブリッドファイナンスの資本性考慮後)となりました。
その背景として、海外成長に向けた投資が先行していることがあります。米国戸建住宅事業は順調に推移していたため、少しアクセルを踏み込みましたが、急激な金利上昇を受け、受注環境が一時的に減退し、期末での在庫が増えたことに加え、円安の影響もありバランスシートが膨らみました。また国内の賃貸住宅事業や商業施設事業においては、請負だけではなく、地域に密着した土地情報を活かす分譲事業を積極的に展開しており在庫が積み上がりました。それが、有利子負債の増加の一因にもなっています。しかし分譲事業については、順調に売却ができており、高い資産回転率を維持しています。
中計策定時から、中計前半は最終年度に向けて投資が先行することは想定しており、D/Eレシオも0.6倍を上回るとみていました。しかし、昨今の金利動向や、今後を見据えて、先手先手で備えていく必要はあると考えています。それに向けた対応策の一つとして、まずは2023年2月より不動産開発投資の判断基準として設けているIRRのハードルレートを10%に引き上げました。

代表取締役副社長/CFO 香曽我部武

2008年に不動産投資委員会(現・事業投資委員会)を設置した当時は、まだまだ請負工事による利益獲得が事業の中心であったこともあり、社内に「資本コスト」を意識させる目的もあって投資判断基準にIRRを採用しました。今回の引き上げは、先の先を見据えたリスク管理の重要性への認識と、「ROE13%以上の達成」への強い意識付けにつながるものと考えています。なお、過去のプロジェクトを検証した結果、多くの案件はIRR10%以上を達成していたことから、今回の基準変更が大幅な投資縮小につながることはないと考えています。加えて、海外での投資案件については各国に応じたリスクプレミアム等を上乗せし、リスク管理をしています。また環境貢献に資する投資を優先するという目的で、ICP(インターナルカーボンプライシング)を導入し、投資の評価基準に加えました。これにより、環境への投資促進も図っていきます。 一方、資金調達については、2022年度は2回の社債発行により2,000億円の資金調達を実施しました。金利の先高観もあり、低金利での長期の資金調達は徐々に難しくなってきています。そのため、外部からの調達だけではなく、投資用不動産、販売用不動産の売却による資金回収のスピードをさらに上げていきます。金利上昇環境による不動産売買マーケットの変化を懸念する声を投資家の方からいただくこともありますが、現状は、国内の不動産売買マーケットに大きな変化はありません。当社はこれまでも、さまざまな場所でバラエティーに富んだアセットを開発し、これまで積み上げてきたテナントとのリレーションを活かしながら、適地をふまえたテナント企業さまを誘致し、そして多様な出口によって不動産を売却することで、大きな利益を安定的に創出してきました。これらの強みを活かしながら、引き続き、不動産開発事業による大きな利益、キャッシュ・フローの創出を実現していきます。

ROE13%以上を達成し市場における企業価値を高める

2023年3月に東京証券取引所からPBR1倍割れの企業に対しての改善要請が出されました。残念ながら当社のPBRは2023年3月末時点で0.9倍台となっており、まだまだ経営改善の余地があるものと考えております。2022年度のROEは14.3%となりましたが、退職給付数理差異の影響によりROEを3ポイント程度押し上げた結果です。過去実績を分析したところ、PBRが1.85倍と最も高かった2017年度は、当社の株主資本コストの2倍以上となるROE17%が実現できていました。成長ドライバーであった3事業(賃貸住宅事業、商業施設事業、事業施設事業)で高い利益率を実現しながら、利益成長率が高かったことが要因でありますが、やはり市場評価を得るにはROE13%以上の達成は欠かせないと考えています。
それに向けて、当社グループでは7次中計で掲げる通り、事業ポートフォリオの最適化を進めています。成長を牽引する事業については重点的に投資することで規模を拡大する。一方で、今後の成長性、資本効率性の面で課題のある事業については、成長シナリオを再考し、再建・再編を進めており、2022年12月にはリゾートホテル事業の譲渡を決断しました。今後の事業ポートフォリオの最適化に向けた検討にあたっては、当社グループ内でシナジーが期待できるか、当社がベストオーナーか、という点を重視し、大和ハウスだからこそ価値を最大化できる事業、将来の利益成長をけん引する事業へ経営資源を集中していく考えです。これらの取り組みを並行して進めることで、最終年度にROE13%以上を達成できるものと考えています。2023年3月末時点でPERは6倍であり、業界特性はあるものの、市場全体から見れば低いと考えていますので、今後も事業プロセスの見直しやIT化などによる業務の効率化を進め、グループ集中購買の取り組みによるコスト競争力の強化にも引き続き取り組んでいきます。

ROICへの社内意識の向上により資本効率の高い経営を実現する

2021年4月の事業本部制の導入以降、社内においてはROICを重要な経営指標の一つとして採用してきました。各事業本部が自律的に経営を行い、ROICへの意識は高まってきているように感じています。それぞれの事業特性に応じて、事業本部長が傘下のグループ会社を含めたバランスシートに責任をもち、事業本部単位でストックとフローのバランスを取りながら利益を上げていくわけですが、利益一辺倒ではなく、投資効率を重視する意識が浸透することで適切な判断がなされることを期待しています。加えて、各事業本部の相互連携が事業全体の収益性向上につながることも期待しています。
資本効率の高い経営を実現するためには、さらなる利益率の向上と資産回転率の改善が必要です。土地を絡めた分譲事業も積極的に進めていますが、資産回転率と投資の「質」の管理は、相当に意識しています。しかし直近の回転率は0.8回転程度となっています。2012年度から2019年度にかけては概ね1倍程度で推移しておりましたので、回転率改善のために棚卸資産の販売促進や、投資不動産の売却等に引き続き取り組んでいきます。事業所評価においては、業績評価に加えてキャッシュ・フローの観点から長期滞留の土地保有の有無、売掛金の早期回収や前受金比率の増加などを評価項目とし、事業所の凡事徹底の積み重ねが資本効率の向上に寄与するようにしています。
非効率資産の圧縮に向けては、政策保有株式の縮減を継続して進めています。毎年取締役会に上程して保有理由などの精査を行い、中長期的な経済合理性を検証しています。2022年度は一部売却も含め、11銘柄の株式売却を実施しました。見直しを始めた2014年度末の98銘柄から2022年度末では56銘柄へと着実に減少しています。

海外における事業投資の状況と管理監督機能強化

代表取締役副社長/CFO 香曽我部武

CFOとして、海外事業に対しては、引き続き金利動向や世界情勢などを注視しながら監督しています。冒頭でも触れたように、土地が起点となる米国住宅事業においては、販売用不動産は2022年3月末と比べて1,086億円(為替影響含む)、増加しています。住宅ローン金利の上昇や住宅価格の高騰によって需要が減少傾向になるなど事業は2022年後半から減速局面に入りました。しかし含み損が出るような状況ではありません。長期的には米国の人口増加や住宅需要の持続的な拡大が予想されることから、むしろ良い土地を取得するチャンスと捉え、潜在的な住宅需要への備えとして優良な土地の取得をきちんと精査しながら進めていきます。
中国マンション事業については2025年度、2026年度引渡し予定の2つのプロジェクトが進行中で、販売用不動産は建設が進むに従って、今後積み上がる予定です。足下の売れ行きは、まだ完成までに時間があるなか、市場の不動産価格が下落局面であることから低調ではありますが、現状は値引きなどせず、状況を注視しながら現地に密着した販売を進めています。
海外におけるリスクマネジメントの強化は2019年の不祥事以来、継続的に取り組む重要課題として認識しており、RC機能の整備・強化を進めてきました。一方で、国内についても、さらなる管理監督機能の強化に向けて、2023年2月に組織改編を発表しました。本店・支社がリーダーシップを発揮し、支店との連携を通じて、管轄するエリアにおける法令遵守・ガバナンスに関する責任を全うできる体制を整えました。健全な事業所経営に向けた組織改革を押し進め、業務効率性と法令遵守の徹底を図っていきます。

安定的な株主還元を実現する

当社の株主還元に関する基本方針は、事業活動を通じて創出した利益を株主の皆さまへ還元することと併せて、中長期的な企業価値最大化のために不動産開発投資、海外事業展開、M&A、研究開発および生産設備などの成長投資に資金を投下し、1株当たり当期純利益を増大させ、株主価値向上を図ることとしています。2022年度の年間配当金額は130円、13期連続の増配を実現することができました。
一方、退職給付会計における数理計算上の差異(数理差異)の影響により、配当性向は27.7%と、公表している配当性向35%を下回りました。当社では数理差異は発生年度において一括処理する方法を採用していますが、2022年度は、金融政策の変更等の影響を受けた期末日における市場金利をふまえ、企業年金制度および退職一時金制度の退職給付債務の算定に用いる割引率を、主として0.8%から1.5%へ変更しました。これに伴う退職給付債務の減少額として営業利益(営業費用の減額)が812億円発生し、加えて、年金資産の運用から生じる運用益159億円等を含めた数理計算上の差異も併せて966億円の影響額となりました。本件は、キャッシュ・フローをともなわない事象となることから、今回はその影響額を除いて配当金額を決定させていただき、退職数理差異の影響を除いた配当性向は35.6%となっています。また経営環境の変化に対応した機動的な資本政策を遂行する株主還元の一環として、2023年5月に700万株の自己株式の消却の実施と、1,000万株(取得金額350億円)を上限とする自己株式の取得を発表しました。
今後も中計で掲げた株主還元方針に変わりはありません。コロナ禍による一時的な事業環境の変化の状況において当社グループの多様なポートフォリオの強みを再認識したことなどから、7次中計では下限配当金額130円を設定しています。着実な利益成長を実現しながら、配当性向35%以上の維持や機動的な自己株式の取得など引き続き安定的な株主還元を実現していきます。

”将来の夢”の実現に向けた企業価値の向上を引き続き目指します

代表取締役副社長/CFO 香曽我部武

2055年に向けて策定した”将来の夢”(パーパス)の実現に向けて、2022年度は、当社の全国の事業所ごとにワークショップ等で議論を深め、それぞれの地域でどのような“未来の景色”を目指すのかを「ミライマチ宣言」としてまとめました。2023年度は組織と個人への浸透策を進め、一人ひとりが世の中の変化やお客さまをはじめとしたステークホルダーに目を向け、行動を起こしていけるようなフェーズに入っていく計画です。これらの活動を通じて培われていく思いや考え方が、当社グループの新たな企業文化の醸成につながることを期待しています。
私たち大和ハウスグループの企業価値向上は、利益を創出する事業価値と、“世の中の役に立つ”という考え方のもと事業を通じて生み出される社会価値を伴わなければ実現できないと思います。そしてそれを実行する人的資本の価値向上にも取り組まなければなりません。今後も皆さまに期待していただける大和ハウスグループであり続けられるよう、”将来の夢”の実現に向けた持続的な企業価値の向上を目指していきます。

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