大和ハウス工業株式会社

DaiwaHouse

1000年以上守り続けた景色を
未来へ

春になると山の麓から頂上へ向かって、桜が次々と咲いていく奈良県・吉野山。平安時代から桜が植えられ、「一目千本(ひとめせんぼん)」とたたえられる圧巻の景色を、百年以上にわたって守り続けている人たちがいます。桜の保全活動に取り組む公益財団法人 吉野山保勝会の皆さまです。
大和ハウスグループは、吉野が創業者・石橋信夫ゆかりの地であることから桜の保全活動に賛同し、支援しています。
ある日の活動には、大和ハウスグループの従業員有志らと共に、当社常務執行役員の石﨑も参加。活動を体験し、吉野山保勝会の皆さまとの対話を経て、「桜」と「大和ハウスグループ」に共通する人財育成や組織風土の醸成について思考を深めました。

座談会

吉野山の桜の保全と、大和ハウスグループの“将来の夢”

公益財団法人 吉野山保勝会
理事長 車田修平さま

公益財団法人 吉野山保勝会
事業部長 龍見伸輔さま

大和ハウス工業 常務執行役員
石﨑順子

大和ハウス工業 本社経営戦略本部 サステナビリティ企画部 主任
宮川真帆

※所属・役職は取材当時のものです

行動に向けた取り組みが始まる

石﨑:大和ハウスグループは、創業100周年にあたる2055年に実現したい“将来の夢”(パーパス)として、「生きる歓びを分かち合える世界の実現に向けて、再生と循環の社会インフラと生活文化を創造する」ことを掲げ、動き出しました。
この1年は、全国の事業所を回って“将来の夢”に込めた想いなどを説明してまいりました。2022年の10月頃からは、“将来の夢”に共感して行動を起こしてもらうよう働きかけを行っています。従業員も、少しずつ変化を感じているようです。最初は懐疑的な意見もありました。しかし、世代の壁、上司・部下の立場を超えていろいろな方と対話することで、“将来の夢”は単なる理想ではなく、「私たちが果たさなければならない使命である」という意識が芽生え始めています。

宮川:事業所ごとでの行動も始まりましたね。

石﨑:ええ、地域の未来を描く「ミライマチ宣言」を各事業所・工場の従業員の対話を通じて策定してもらいました。自分たちが根差すマチの未来にはどんな景色が広がっているのかを考えることは、「生きる歓びを分かち合える」に直結します。この宣言で、目指す地域の姿を明確にし、実際の取り組みとリンクしていければと考えています。

宮川:吉野の桜を守る活動も「目指す地域の姿」につながっています。

石﨑:そうですね。桜の保全活動は、人財育成や組織風土の醸成と共通するものがあると感じています。

宮川:では、吉野山保勝会について教えていただけますか?

車田:吉野山はヤマザクラを中心に約200種3万本の桜が群生し、世界遺産と国立公園に指定されている極めて珍しい自然遺産です。1000年以上も昔から吉野山では蔵王権現さまの御神木として桜が献木され、地域住民で大切に保全してきました。そして、その桜の保全と文化的景観の保護を目的に1916年(大正5年)に吉野山保勝会が発足し、「吉野山を守っていく」という使命のもと、保全活動を続けています。メンバーは地元の人が大半で、理事10名、評議員14名、桜守3名、事務2名の29名。3万本の桜を、3人の桜守を中心に皆で守っています。

桜を育てるために土を育てる

宮川:私たち大和ハウスグループとのご縁は2008年からだと聞いています。

車田:その当時、年々衰退していく吉野山の桜を何とか再生できないかと悩んでいたんです。大和ハウス工業創業者の石橋さんが奈良県吉野郡出身であったことから、大和ハウスさんへ相談に伺いました。

宮川:そこから大和ハウスグループも一緒に保全活動に取り組むようになったんですよね。何か変化はありましたか?

車田:当時は手探り状態で、植樹活動を中心に桜を再生しようとしていました。しかし、苗木を植えても、それなりに育つ桜もあれば育たないものもある。そうした中、大和ハウスの担当者が紹介してくれた専門家から「土を育てる」という考え方を教わりました。土壌を改良すれば桜が元気になるという考えに懐疑的な意見もありました。しかし、専門家や保勝会の皆で何度も対話を重ねることで、「桜をよみがえらせたい」という想いが勝り、この考えを取り入れることにしたんです。

宮川:私たちも土壌改良をお手伝いしました。

龍見:土に炭を混ぜて、土の通気性や吸水性を改良したんですよね。枯れ木を混ぜる、土を掘り返すなど、土の中の微生物を活性化させる土壌改良を行ってから約8年、土を育て続けたエリアには変化が現れています。まず、いろいろな種類の草が生えるようになりました。シダ植物やワラビも見られます。モグラの穴も増えました。さまざまな草木が生え、生き物が増える。土が健康で、生物多様性のある場所で育つ桜は、他のエリアと比べて成長が早くて幹が太い。やはり、土が大切なんだとよく分かりました。

2016年8月 太閤花見塚
【土壌改良前】植物がまばらにしか生えない荒地

2023年5月 太閤花見塚
【土壌改良後】さまざまな植物が育つ地に変化

2015年の創業60周年時に会長(当時)の樋口武男が桜を植樹

8年後の2023年には美しい若木に成長

花咲く5日間のための360日

宮川:土を育てるだけでなく、種から苗木も育てているんですよね。

龍見:桜の木は年を重ねれば衰えますし、自然災害で倒れてしまうこともありますからね。

車田:二十数年前の台風では数百本も倒れました。

龍見:数年前の台風でも桜の大木が倒れましたが、もう手の施しようがない。それより大事なのは、倒れたり衰えたりした桜をどうカバーするか、ということです。そうなったときにいつでも元気な桜に植え替えられるよう、土を育て、苗木を育成することが、吉野山の桜を保全することにつながると信じています。
昔は、他の地域で育てた苗木を植樹していましたが、今は桜の苗木を育成する畑として吉野山に「桜育成園」を作り、自分たちで種から育てています。サクランボを拾って、発芽させ、ある程度の大きさになったら山に還す。種を数千個植えて、芽が1本しか出なかった年もあれば、1000本近く芽が出た年もありますが、それでも毎年変わらず一連の活動を繰り返しています。

車田:桜が咲いている期間は5日間ぐらい。残りの360日は桜を咲かすために頑張っているというわけです。

宮川:そのうち私たちがお手伝いできることはごくわずかですが、大和ハウスグループの従業員は年6回、ボランティアとして保全活動に参加しています。家族連れや何度も参加される方、ここでのご縁をきっかけに一緒に山登りに出かけられる方々もいて、新しいコミュニティが生まれて広がっています。参加しているOBの方から、創業者の話を聞ける貴重な機会にもなっていますし、何よりも自分たちが種から育てた桜が大きくなり、春になったらどんな桜を咲かせてくれるのかが楽しみなんです。

車田:力強い桜になるためには、根がどれだけ元気であるかが重要です。土が違えば、育ち方にも違いが出てきます。2008年のあの時、行動に踏み切ったことが今につながっているのだと実感しています。

龍見:良質なヤマザクラを育成していくために、拾う種にもこだわっており、良い種が実る母樹を定めています。この母樹も大切に守らなくてはなりません。ソメイヨシノは基本的に遺伝子が同じクローンなので気象条件が同じになると一斉に咲きますが、ヤマザクラは個体ごとに開花時期が変わり、花の色も多様です。

石﨑:その意味では、桜と人はよく似ていますね。土である職場環境をいい状態に保たないと人は育ちませんし、植えた後もいろいろな草が共生する方が良いところも、人と一緒です。桜として一人前になるまで50年、寿命は70年というのも、人間と似ていますね。何十年もかけて完成されるという点に、本当の意味で桜の素晴らしさがあると感じます。ヤマザクラの強いDNAを次代に残すために努力されているところにも感銘を受けました。

桜の苗木を育てる桜育成園

吉野山の急斜面に桜を植樹し下草を刈る

将来に向けて土壌と組織を変えていく

石﨑:土を改良されたように、常に新しいことを試さないといけない点は企業も同じです。当社で昨年実施したエンゲージメントサーベイからは、従業員の半数以上が「世の中の役に立ちたい」という想いを抱えていることが分かり、大きな気づきを得ました。
そこで取り組んでいるのが、先に述べた「ミライマチ宣言」です。地域密着型で長期にわたって寄り添い共創共生で価値を創出する力を発揮することで、共感していただける仲間が増え、地域課題の解決に向けた新しいビジネスやイノベーションが生まれると期待しています。そのためにも職場環境をより良い状態に変え、働きがいを醸成するための知恵を絞らなくてはいけません。さまざまなことを試し、さまざまな人が多様な価値観を持ち寄らないと、会社は良い状態にならないのです。次の母樹となる企業のリーダーもしっかりと育成していかなければなりません。

車田:私たちも、後継者の育成が喫緊の課題だと考えています。桜を育てていくには、桜の世話をする人も育てなくては。

龍見:保勝会の存続に向けた若手メンバーの育成、そして桜守の育成。この人財育成が最も大事です。この地域は若い人が少ないのですが、なるべく早く次の担い手を見つけたい。現在、桜守は3人いて、1人は吉野出身ですが、あとの2人は桜が好きで吉野の桜を守りたいという想いで来てくれた子たちです。そんな彼らもいずれは歳を取る。そこで次の桜守をどのタイミングで採用し、育てるかを検討しています。基本的な技術を持つ人を採用しても、桜守として一人前になるには時間がかかる。人を雇うには費用もかかりますから、時期の見極めは難しいところです。

車田:「世界に誇れる日本・吉野の桜にする」。これが私たちの夢です。そのためにも少しずつでも桜を増やしていきたい。何年かかるか分かりませんが、続けることに意味があります。さらに、大和ハウスさんと一緒に活動することで知識も身に付き、新しい取り組みも考えるようになりました。これからも日本一、世界一の桜を目指して、大和ハウスさんと共に歩ませていただきたいと思います。

石﨑:お互いに刺激し合いながら、桜の保全活動を大きくしていけたらいいですよね。人財についても同感です。当社の創業者である石橋信夫は「事業を通じて人を育てる」と言いました。人こそが一番大切という考え方によるものです。変化の激しい今、人財はますます重要になります。大和ハウスグループらしさも失わないようにしながら、未来に向けて一人ひとりが活躍できる環境や組織を作っていきます。
“将来の夢”を実現するための組織変容と、“桜”を育成するための土壌改良は、フィールドが違うだけでやっていることは同じではないでしょうか。皆がさまざまな個性を発揮して活躍し、さまざまな花を咲かせる。これは体感しないと分からないことで、私自身も桜の保全活動を体験したことで気づきました。
“将来の夢”への取り組みはまだ始まったばかりで長期的に取り組むべきものです。そして吉野の桜が満開に咲き誇るように、“将来の夢”で掲げている「人が生きる歓びを分かち合える世界」が広がっている景色となるよう、私も尽力してまいります。

2015年の大和ハウス工業創業60周年記念に
植樹した桜の前にて

苗木育成活動

\干し草刈りで気持ちいい汗を流しました/
桜の景色を守るために私たちにできること

令和5年7月12日実施の苗木育成活動より

年に6回ある桜保全活動のうち、この日は夏の日差しのもと、冬に桜の苗床を保温する干し草刈りを行いました。鎌を手に持ち、長靴を履き、草が生い茂る野原へ突入。刈り取った草は束ねて天日干しに。日頃会わないグループ会社の人や幅広い世代の人たちと一緒に、普段はできない体験に汗を流し、一日が終わる頃には少し成長した自分に出会えました。

参加者の声

参加された方々の声をお聞きしました

大和ハウスパーキング 大阪支店 福井良(左) 杉水馨(右)

杉水:ボランティア活動に参加するのが好きなんです。街をきれいに清掃したら「貢献した!」と思えるし、終わった後の達成感もたまらない。自然が好き、自然環境を守りたいと思う人なら保全活動がおすすめですね。今日はがっつり草を刈る作業なので、達成感も違うはずです(笑)。

福井:奈良出身なので、吉野の桜が日本一だと思って生きてきました。でも、桜は手入れしなくても咲くと思っていたので、「保全活動って何?」と興味を引かれて参加。子どもにも教えたくて一緒に参加したことも。いろんな人と会えるのも面白いですよね。話していた方が後から大和ハウス工業の副社長だと分かったり、今日も虫除けスプレーを渡した人が常務の石﨑さんだと聞いたりして驚いています(笑)。

大和ハウス工業 常務執行役員 石﨑順子

日頃の運動不足を痛感しました(笑)。でも、この干し草がないと、苗木が冬をうまく越せないんですよね。今日だけでも大変だったのに、花が咲くまで、吉野山保勝会の皆さんやボランティアの方々がどれほど努力されていることか。体感しないと分からなかったことを、私も今後の糧にしていきます。

大和リビング 関西支店 柏岡幸輝

去年の春に行われた桜の募金活動に初めて参加し、その時に「保全活動、楽しいよ~」とお誘いを受けました。それで今年の第1回目の活動に参加したら、本当に、純粋に楽しかったんです。土壌改良の活動の際には会社で「何やってきたの?」と聞かれて、「モグラの穴を探していました」って答えたり(笑)。普段知ることのない知識が身に付き、生きていく上でも役立つ!と思っています。

大和ハウスグループOB 橋本周司(左) 梶本武士(右)

橋本:地元が吉野なので、退職してから約10年、時間がある限り参加しています。吉野の桜は平安時代からの歴史があり、豊臣秀吉も徳川家康も花見をした由緒ある桜です。その桜を守る活動に若い世代の方たちが参加し、私たちの後に続いてくれることを本当にうれしく思っています。

梶本:私は、創業者がリゾートホテル事業を立ち上げた時、創業者直轄で仕事をしていたんです。優しいけれど厳しい方でした。そんな話に若い方たちは興味があるようで、活動の休憩時間などに話すと喜んでくれています。そうやって後輩の方たちと交流できることも保全活動の楽しみです。

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