SMART ECO-TOWNS サステナブルな街 ドイツ

太陽光発電によって、生活に必要とする以上のエネルギーを生産するプラスエネルギー住宅。

写真提供:アマナイメージズ

街

サステナブルな街 特集

ヴォーバン(ドイツ)
~ヨーロッパの自然循環型環境都市に学ぶ~

ドイツ

2018.08.08(2013.12.2記事再掲)

ドイツ ベルリン フライブルク市 ヴォーバン

古いものを大切にする精神を持ちながらも、「サステナブルな社会」に向けて、大きく一歩前進しているヨーロッパ諸国。その中でも、成功事例として注目を集めているのがドイツとスウェーデンの都市開発プロジェクトです。

環境にやさしく、活力のある地域はどのようにつくられているのか、環境建築の設計で有名な建築家の小泉雅生さんに教えていただきました。

建築家 小泉 雅生 さん

1986年、東京大学大学院在学中に一級建築士事務所・株式会社シーラカンスを共同設立。
1988年、同大学院工学系研究科建築学専攻修士課程修了。
2001年~、東京都立大学大学院助教授。2005年、小泉アトリエ設立。
2010年~、首都大学東京大学院教授。
●受賞歴/アシタノイエ(2007 サステナブル住宅賞)、ENEOS創エネハウス(2009 グッドデザイン賞)、千葉市美浜文化ホール・美浜保健福祉センター(2012 公共建築賞 優秀賞)、象の鼻パーク/テラス(2012 AACA賞 優秀賞)など多数。

環境政策の先導役 ヴォーバン地区

ドイツ南西部のフライブルクは、人口約20万人の都市です。環境にやさしい次世代の路面電車LRT(※1)と自転車を優先し、自動車の乗り入れを規制した交通政策を実施していることで有名です。

フライブルク市の環境政策の先導役となったのが、南に位置するヴォーバン地区。この38ヘクタールの敷地は、戦後駐留していたフランス軍の兵営地で、ベルリンの壁が崩れて東西冷戦が終わるとドイツ政府に返還されました。中心部に近く、人口も増えていることから住宅地として開発することに決定。1997年に工事が始まり、約10年かけて完成しました。

※1 ライトレールトランジット

住民の意見が形になった、ソーシャル・エコロジー団地

フライブルク市は当初、兵舎だけでなく樹木まで全てを取りさり、まったく新しい住宅地をつくる計画を立てていました。これには市の有志らが猛反発。緑の党や社民党の市議も賛同して、住民の意見も反映させた住宅地をつくることになりました。

街づくりをするにあたって、住民からは「ソーシャル・エコロジー」というコンセプトが提案されました。ここには、緑化、地域暖房と省エネ住宅の推進、購入した土地に駐車場をつくることができない「カーポートフリー」の実現、などが盛り込まれています。子どもから高齢者までが住みやすい、生活者のための街として確立することを目指したのです。

実際にヴォーバン地区を歩いてみると、緑の多さに驚かされます。地上から1メートルの高さで幹まわりが80センチを超える木は保存条例によって切り倒すことができないため、新興住宅地にもかかわらず大木のある景観が存在するのです。

また、角度が10度以下の平屋根については、屋上緑化が義務付けられています。地面を走るトラムの専用軌道も緑化されています。木を保存し、緑化を進めることで景観を守るのはもちろんのこと、ヒートアイランド現象の緩和や、雨水が浸透することによる下水処理施設の負担減などさまざまなメリットがあります。

住宅地を走るトラムについては、軌道を緑化。

写真提供:日経BP社

「住む人にやさしい」エネルギー効率のよい集合住宅

住まいにおけるヴォーバン地区の大きな特長は、すべて集合住宅であることです。ここでは、間伐材や値のつかないような木材を森でそのままチップにし、エネルギー源として給湯や暖房に供給できるコージェネレーションシステム(※2)を導入しています。

各住戸へは、コージェネレーションシステムを利用して熱が供給されますが、その際、配管からの熱ロスが生じてしまいます。集合住宅では、その配管をコンパクトにすることができるので、戸建に比べてロスが少なく、エネルギー効率的に有利となります。

また、建物そのものも、屋根や壁、ガラスなどに断熱性能が高いものが使用されており、さらに、集合住宅は隣と戸境壁を共有しているので、壁面から熱が逃げにくく、暖房にかかるエネルギーが少なくてすみます。

※2 ガスタービンやディーゼルエンジンで発電する一方、その排出ガスの排熱を利用して給湯・空調などの熱需要をまかなうエネルギー効率運用システム

パッシブハウス。南側の壁面積の50%以上をガラス窓にし、適度な長さのひさしを付けることで、太陽高度の高い夏には陽射しを遮って室内温度を下げ、太陽高度が下がる冬には陽射しを多く取り入れることで室内温度を上げている。

写真提供:日経BP社

「遊びの道路」を確保 マイカーに頼らない暮らし

交通政策もまたユニークです。ヴォーバン地区内に土地を購入した居住者は、その土地に駐車場を設置することを禁じられています。居住者はその車を地区内数カ所に設置された立体駐車場に駐車し、家までは徒歩または自転車で移動しています。

また、メイン通りから住宅地に入る通りは「コ」の字形で、再びメイン通りに戻る構造になっており、基本的に居住者以外は住宅地に入りません。この道路は「遊びの道路」と指定されていて、日常的に子どもたちが遊ぶことが前提とされ、安全が最優先されています。 

地区のはずれにある立体駐車場。 駐車場の利用者が共同出資して太陽光発電設備を設置したため、「ソーラーガレージ」という名前がつけられた。

写真提供:日経BP社

【左】車両の徐行が義務付けられている「遊びの道路」。「コ」の字形に道路を配置することで、車の通り抜けを避けている。
【右】建物の1階は住宅ではなく店舗を入れるようになっている。日常的な買い物はすべて徒歩圏内ですませることができる。

写真提供:日経BP社

車の利用を抑えた住宅地ですが、住民に我慢を強いているわけではありません。フライブルク市の中心までは、トラムやバスで約15分で結ばれており、利便性を高めると同時に雇用を生み出すため、メイン通りに面した建物の1階はすべて店舗に。自動車の必要性が低くなるよう、整備されています。

何かを我慢するのではなく、より暮らしやすい住空間を追求していくことが、サステナブルな街づくりなのです。

Koizumi Voice

”多世代共生で住み継がれる街に”

入居希望者を集めてからの住まいづくり。計画的に多世代が共生する集合住宅がつくられました。

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