Vol.2 雪の家、イグルー(カナダ北部)

Vol.2 雪の家、イグルー(カナダ北部)

北極海沿岸の気候、イヌイットの生活

ベーリング海峡地域からアラスカ、カナダの北極海沿岸、ラブラドル、グリーンランドに広がるツンドラ地帯には、イヌイットと呼ばれる先住民族が暮らしています。樹木が生育できる境界線である森林限界より北に位置するこの地域は、広大な永久凍土の広がる一年中寒冷な気候です。イヌイットは、世界で最も寒いところに住む人々といえます。

イヌイットが暮らす地域は氷と雪におおわれ、植物が育たず、農耕ができません。そのため、カヤックやイヌぞりを使い移動しながら魚やアザラシなどの海獣を捕って生活をします。アザラシを捕るのは食べ物としてだけでなく、油を燃料に、毛皮は服や靴として使うためです。またトナカイの遊牧も行い、その肉は石ランプの上の土鍋で煮るか、ナイフで細かく切って生で食べます。植物性の食料は野イチゴなどに限られ、サケやマスなどの燻製(くんせい)やアザラシの脂肪などを保存食にしています。

雪の家・イグルーの特徴

イヌイットはアザラシ猟をするため、数日ごとに移動します。そのときにつくられるのが、イグルーという雪の家です。雪でつくるのは、木材や石などの建築材料が手に入らないため。仮設の住居ということもあって、時間や手間をかけずに建てられます。日本の「かまくら」と似た形ですが、つくり方が異なります。

イグルーづくりは、積雪を切り取ることからスタートします。雪の大きさは、およそ1m×0.5m、厚さ30cm。いくつか切り取った雪のブロックを、下から順にドーム状に積み重ねて半球のドーム型に家をつくっていきます。入口の形はアーチ状になっていたり、屋根が平らであったりすることもあります。入り口と居室のドームとは、トンネルのような通路でつながれています。複数の部屋をつくるときには、半球のドーム同士をつなげて部屋を増やすのが一般的です。 長い間、採集狩猟やトナカイの遊牧などで移動生活を行ってきたイヌイットですが、最近では一定の場所で暮らす定住化が進んでいます。

風や寒さを防ぐさまざまな工夫

イヌイットが暮らす寒冷地帯の冬は気温が-30~40℃に下がるときもあり、寒さの厳しい地域です。雪を材料に建てられるイグルーは、そのような寒さにどのように対応しているのでしょうか。まず風をよけるために、イグルーの入口の向きは、通路となるトンネルの軸をはずして少し曲げてつくります。こうすることで、冷たい風や雪がまっすぐ部屋まで吹き込まないようにしています。また寒さや湿気を防ぐため、内部の床や壁に動物の毛皮を敷いたり張ったりします。天井の高さは、人間の背丈より少し高い2メートル程度。イグルーの中では基本的に座って過ごします。部屋の中で煮炊きをし、一番奥のスペースには、寝台またはベンチとして一段高い床が設けられています。

イグルーの構造

季節や地域によって異なる家

雪以外の建築材料が手に入る地域では、イグルーとは異なるさまざまな家がつくられます。夏に住む家として一般的なのは天幕(テント)の家。グリーンランド、ラブラドルからアラスカの広い範囲で見られるのは、水平の棟木を何本かの柱で支える棟形のテントです。柱には木だけでなく、セイウチやアザラシなどの骨も使われています。アラスカでは、これ以外に円すい形やドーム形のテントもつくられています。ドーム形のテントの家は、柳の小枝を組み合わせてドームをつくり、その上を獣(けもの)の皮でおおいます。

グリーンランドには、イヌイットが冬に住む石造りの家があります。屋根は芝土でおおわれ、数家族が共同で暮らせるように、大きく建てられています。北西北極圏でよく見られるのは、しっかりとした木造の家。木造の家には決まった形がなく、流木を積み重ねたさまざまな形の家がつくられています。イヌイットの冬の家は、ベーリング海地域に分布する高床の陸屋根形式の家のように、技術的に洗練された家も少なくありません。このような伝統的な住居で暮らしていたイヌイットですが、現在は暖房設備のついた木造家屋が普及し、石造りや流木でつくる住居はあまり見られなくなりました。

POINT

この家の環境に合わせた工夫ポイントって

  • どこにでもたくさんある材料(雪)を使って、簡単に作れるよう工夫しているんだね!
  • 雪は冷たくてすぐ溶けてしまうと思っていたけど、それを使ってきびしい風や寒さを防ぐ家を作るなんてすごいなぁ。
  • アザラシの毛皮で家の中を暖かくできるんだ!

参考文献:布野修司「イグルー,雪の家―エスキモー、極北地方」布野修司編『世界住居誌』昭和堂、2005年、298-299頁


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